2017年04月27日

「昔はなし」その283 これも恐妻家、角三

これも恐妻家、角三

 札木に旅館を経営していた角三(かくさ
ん)の主人の話は、前に申し上げたが、こ
の人は一ぱいやると、若い妓を呼んでなか
なか賑やかに遊ぶ人でした。
 角三はやせ型で男ぶりもよく、もてるも
もてたんです。妻君は肥満型で、焼もちや
でした。
 あるとき、妻君が店先の廊下を掃除の時
に主人に宛た若い妓からの手紙を拾ったこ
とがありました。妻君はこの手紙を手にし
ながら「旦那サマ」と金切声で呼ぶので、
角三が何事かとそこえ顔を出すと、妻君は
手にもっていたホーキで角三の腰をどうづ
きましたので、角三は不意をくらってひっ
くり返りました。
 そこへまた、運悪く来客があって「どう
なさいましたか」というと妻君は「猫が来
ましたので、追い払うつもりが主人の腰に
一寸あたってしまいまして」と妙な弁解を
いたしました。
 来客は妻君と主人の両方の顔を見合せま
したが、しばらくして「なるほどんねえ、
なるほどねえ」というよりほかはなかった
のです。
 その後、豊橋中に「なるほどねえ」
という言葉がながく流行しました。

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Posted by ひimagine at 06:00│Comments(0)豊橋の昔はなし
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