2018年10月22日
弦斎夫人の料理談 その11
馬鈴薯(じゃがゐも)は如何(いか)に料理(れうり)するか
記者『この頃(ごろ)は新(しん)の馬鈴薯(じゃがゐも)が澤山(たくさん)出ますがあれはどうして食べたら宜(よ)うございませう
夫人『新の馬鈴薯はゆで方が肝心(かんじん)です。古い馬鈴薯は水(みづ)からゆでますけれども新の馬鈴薯は先(ま)づ湯をグラグラと煮立(にた)たせてその中へ薯(ゐも)を入れて少なくとも三十分間以上(いじゃう)ゆでなければなりません。ゆで方が少ないと馬鈴薯(じゃがゐも)がネバネバして心(しん)に硬(こは)い處(ところ)があって美味(おい)しくありません。三十分間ゆでた後(のち)お砂糖(さたう)を入れて二十分間煮(に)てその次に鹽(しお)を入れて又(また)十分間煮ます。つまり一時間かかって煮なければ美味しくは出來ません。
記者『馬鈴薯(じゃがゐも)が極(ご)く上等(じゃうとう)なお料理(れうり)になりませうか。
夫人『それはいくらでも上等なものになります。馬鈴薯ばかりのお料理も四十通(とほ)りや五十通(とほ)り位はありますが、その中(うち)で手軽に出来て美味しいのはパンケーキでせう。
記者『それはどうして拵(こしら)へます
夫人『それは先(ま)づ馬鈴薯(じゃがゐも)をゆでて裏漉(うらご)しにします。その漉(こ)した薯(ゐも)を大匙(おほさじ)に三杯だけ兜鉢(かぶとばち)の中(なか)へ入れます。そこへメリケン粉(こ)大匙一杯と砂糖大匙一杯と鹽(しを)少しとを加(くは)へます。それから先(ま)づ生(なま)玉子を一つ落(おと)して杓子(しゃくし)でよく掻(か)き廻(まは)します。それからまた生玉子を一つ落して掻き廻して、もう一度生玉子を入れます。つまり三つの玉子を三度に入れて混ぜます。それから牛乳(ぎうにう)を少しづつ幾度(いくど)にも凡(およ)そ大匙七杯ほど加(くは)へて行(い)くとドロドロのものが出來ます。別にフライ鍋(パン)にバターを溶かして、それがよく煮立ったとき、今のものを先(ま)づ四分の一位あけて片側(かたがは)が焼けたら裏返して、又片側を焼きます。さうすれば四人前出來る勘定(かんじゃう)ですが一枚づつ中へジャムを入れて柏餅(かしはもち)のように包んで温(あたた)かい中(うち)に食べますと美味しうございます。
記者『どの位に焼きますか
夫人『あんまり焼き過ぎるといけません。少し色が變(かは)って來た位な處で宜うございます。出す時にはその上(うへ)にお砂糖(さたう)をおかけになると尚(なほ)美味しうございます。
記者『かぅ云(い)ふお料理(れうり)はお話を伺(うかが)ったばかりではよく分かりませんから實物(じつぶつ)の御馳走(ごちそう)に預(あづか)りたいものですね。
夫人『おほほほほ、では早速(さっそく)拵(こしら)へて差上(さしあ)げませう、頬(ほほ)の落ちないやうに御用心(ごようじん)なさいまし。
記者『この頃(ごろ)は新(しん)の馬鈴薯(じゃがゐも)が澤山(たくさん)出ますがあれはどうして食べたら宜(よ)うございませう
夫人『新の馬鈴薯はゆで方が肝心(かんじん)です。古い馬鈴薯は水(みづ)からゆでますけれども新の馬鈴薯は先(ま)づ湯をグラグラと煮立(にた)たせてその中へ薯(ゐも)を入れて少なくとも三十分間以上(いじゃう)ゆでなければなりません。ゆで方が少ないと馬鈴薯(じゃがゐも)がネバネバして心(しん)に硬(こは)い處(ところ)があって美味(おい)しくありません。三十分間ゆでた後(のち)お砂糖(さたう)を入れて二十分間煮(に)てその次に鹽(しお)を入れて又(また)十分間煮ます。つまり一時間かかって煮なければ美味しくは出來ません。
記者『馬鈴薯(じゃがゐも)が極(ご)く上等(じゃうとう)なお料理(れうり)になりませうか。
夫人『それはいくらでも上等なものになります。馬鈴薯ばかりのお料理も四十通(とほ)りや五十通(とほ)り位はありますが、その中(うち)で手軽に出来て美味しいのはパンケーキでせう。
記者『それはどうして拵(こしら)へます
夫人『それは先(ま)づ馬鈴薯(じゃがゐも)をゆでて裏漉(うらご)しにします。その漉(こ)した薯(ゐも)を大匙(おほさじ)に三杯だけ兜鉢(かぶとばち)の中(なか)へ入れます。そこへメリケン粉(こ)大匙一杯と砂糖大匙一杯と鹽(しを)少しとを加(くは)へます。それから先(ま)づ生(なま)玉子を一つ落(おと)して杓子(しゃくし)でよく掻(か)き廻(まは)します。それからまた生玉子を一つ落して掻き廻して、もう一度生玉子を入れます。つまり三つの玉子を三度に入れて混ぜます。それから牛乳(ぎうにう)を少しづつ幾度(いくど)にも凡(およ)そ大匙七杯ほど加(くは)へて行(い)くとドロドロのものが出來ます。別にフライ鍋(パン)にバターを溶かして、それがよく煮立ったとき、今のものを先(ま)づ四分の一位あけて片側(かたがは)が焼けたら裏返して、又片側を焼きます。さうすれば四人前出來る勘定(かんじゃう)ですが一枚づつ中へジャムを入れて柏餅(かしはもち)のように包んで温(あたた)かい中(うち)に食べますと美味しうございます。
記者『どの位に焼きますか
夫人『あんまり焼き過ぎるといけません。少し色が變(かは)って來た位な處で宜うございます。出す時にはその上(うへ)にお砂糖(さたう)をおかけになると尚(なほ)美味しうございます。
記者『かぅ云(い)ふお料理(れうり)はお話を伺(うかが)ったばかりではよく分かりませんから實物(じつぶつ)の御馳走(ごちそう)に預(あづか)りたいものですね。
夫人『おほほほほ、では早速(さっそく)拵(こしら)へて差上(さしあ)げませう、頬(ほほ)の落ちないやうに御用心(ごようじん)なさいまし。
Posted by ひimagine at 16:54│Comments(0)
│弦斎夫人の料理談