2018年10月19日
弦斎夫人の料理談 その10
糠味噌は如何に造るか
記者『糠味噌と云へば先日(せんじつ)私(わたくし)どもで新しい糠味噌を作りましたが何分(なにぶん)にも味(あぢ)が悪くっていけませんでした。糠味噌を新しく拵(こしら)へるにはどう云う風に致したものでせう。
夫人『糠味噌の拵へ方はいろいろありますけれども一番宜(よ)いのは先(ま)づ古い糠を一升普通(なみ)の篩(ふるひ)でよくふるってそれから焙烙(はうろく)でよく炒(い)ります。
記者『おっと少しお待ちください。古い糠とお云ひですが新しい糠ではいけませんか。
夫人『糠の新しいのは酸敗(さんはい)していけませんから澤庵(たくあん)を漬ける時でも糠味噌を拵へる時でも糠は古いのに限ったものです。
記者『さう云う譯(わけ)ですかね。糠を炒った後はどう致します。
夫人『一升の糠がよく炒れたらばそこへ一合(いちがう)の鹽(しほ)を交(ま)ぜて桶(をけ)の中へ入れて置きます。別にお米を磨(と)いだ白水(しろみづ)の一番濃い處(ところ)を一旦煮立ててそれを冷(さ)まして置きます。冷めた時前の糠の中へ宜(い)い加減に注(さ)して糠と白水とをよく混ぜるとそれで出来ます。
記者『その方法で拵へたのは幾日(いくにち)位(くらゐ)から美味(おい)しく食べられませう。
夫人『毎日野菜を漬けて行(ゆ)くと一週間目位からよく慣(な)れて味がでます。しかし糠味噌の新しいのはどうしても古い糠味噌ほど美味(おい)しくありませんから、今の方法で新しい糠味噌を拵へたら御懇意(ごこんい)な家(うち)から古い糠味噌を少しでもお貰(もら)ひなすって今のものの中へ混(ま)ぜてお置きなさるのが一番宜(よ)うございます。
記者『懇意な家で古い糠味噌を貰ふことの出来なかった塲合(ばあひ)はどうしたものでせう。
夫人『その時は新しい糠味噌へ一番最初に澤庵を五六本ばかり洗はずにその儘(まま)漬けて置くと早く慣れます
記者『糠味噌には折折(をりをり)足(た)し糠をしますがあれにも古い糠が宜(よ)うございませうか。
夫人『左様(さう)です。やっぱり古い糠を一旦炒ってお入れなさる方が宜うございます。それに醤油(しゃうゆ)の残滓(おり)だの味噌漬けの味噌だの燗冷(かんざ)ましのお酒だのそんなものの残ったのは少し位づつ糠味噌へ入れると味がよくなります。しかし、あんまり澤山入れてはいけません。
記者『胡瓜(きうり)を糠味噌へ漬けると折折(をりをり)苦(にが)いのがありますが、あれはどうしたら苦味(にがみ)が抜けませう
夫人『胡瓜は切口(きりくち)の方を上(うへ)に向けてその切口を糠味噌とすれすれに立てて置くと苦味が抜けます。それから胡瓜の切口に重炭酸曹達(おうたんさんそーだ)を少し塗って漬けても宜うございます。しかし胡瓜は曲がったのや色の黒ずんだのはどうしても苦味がありますからそんなものは最初から使はない方が宜うございます。。
記者『糠味噌と云へば先日(せんじつ)私(わたくし)どもで新しい糠味噌を作りましたが何分(なにぶん)にも味(あぢ)が悪くっていけませんでした。糠味噌を新しく拵(こしら)へるにはどう云う風に致したものでせう。
夫人『糠味噌の拵へ方はいろいろありますけれども一番宜(よ)いのは先(ま)づ古い糠を一升普通(なみ)の篩(ふるひ)でよくふるってそれから焙烙(はうろく)でよく炒(い)ります。
記者『おっと少しお待ちください。古い糠とお云ひですが新しい糠ではいけませんか。
夫人『糠の新しいのは酸敗(さんはい)していけませんから澤庵(たくあん)を漬ける時でも糠味噌を拵へる時でも糠は古いのに限ったものです。
記者『さう云う譯(わけ)ですかね。糠を炒った後はどう致します。
夫人『一升の糠がよく炒れたらばそこへ一合(いちがう)の鹽(しほ)を交(ま)ぜて桶(をけ)の中へ入れて置きます。別にお米を磨(と)いだ白水(しろみづ)の一番濃い處(ところ)を一旦煮立ててそれを冷(さ)まして置きます。冷めた時前の糠の中へ宜(い)い加減に注(さ)して糠と白水とをよく混ぜるとそれで出来ます。
記者『その方法で拵へたのは幾日(いくにち)位(くらゐ)から美味(おい)しく食べられませう。
夫人『毎日野菜を漬けて行(ゆ)くと一週間目位からよく慣(な)れて味がでます。しかし糠味噌の新しいのはどうしても古い糠味噌ほど美味(おい)しくありませんから、今の方法で新しい糠味噌を拵へたら御懇意(ごこんい)な家(うち)から古い糠味噌を少しでもお貰(もら)ひなすって今のものの中へ混(ま)ぜてお置きなさるのが一番宜(よ)うございます。
記者『懇意な家で古い糠味噌を貰ふことの出来なかった塲合(ばあひ)はどうしたものでせう。
夫人『その時は新しい糠味噌へ一番最初に澤庵を五六本ばかり洗はずにその儘(まま)漬けて置くと早く慣れます
記者『糠味噌には折折(をりをり)足(た)し糠をしますがあれにも古い糠が宜(よ)うございませうか。
夫人『左様(さう)です。やっぱり古い糠を一旦炒ってお入れなさる方が宜うございます。それに醤油(しゃうゆ)の残滓(おり)だの味噌漬けの味噌だの燗冷(かんざ)ましのお酒だのそんなものの残ったのは少し位づつ糠味噌へ入れると味がよくなります。しかし、あんまり澤山入れてはいけません。
記者『胡瓜(きうり)を糠味噌へ漬けると折折(をりをり)苦(にが)いのがありますが、あれはどうしたら苦味(にがみ)が抜けませう
夫人『胡瓜は切口(きりくち)の方を上(うへ)に向けてその切口を糠味噌とすれすれに立てて置くと苦味が抜けます。それから胡瓜の切口に重炭酸曹達(おうたんさんそーだ)を少し塗って漬けても宜うございます。しかし胡瓜は曲がったのや色の黒ずんだのはどうしても苦味がありますからそんなものは最初から使はない方が宜うございます。。
Posted by ひimagine at 12:49│Comments(0)
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