2018年10月17日

弦斎夫人の料理談 その9

御飯は如何(いか)にしてお櫃(ひつ)に移すべきか


記者『御飯の炊き方はそれで分(わか)りましたがお櫃へ移(うつ)す時にもいろいろ心得(こころえ)がありませうね。

夫人『左様(さよう)です。お櫃は第一に古い程(ほど)御飯の保(も)ちが宜(よ)いので新しいお櫃はどうしても御飯が悪くなります。それにお櫃がよく乾いた處(ところ)へ御飯を移さなければいけません。朝炊く御飯には前の晩に乾かしたお櫃を使(つか)ふやうにするのが肝心です。

記者『ところが雨の降る日なんぞはお櫃が乾かないで困りますが火であぶって乾かしたのはどうでせう。

夫人『火であぶっても構(かま)ひませんがそのかはりその温度が冷(さ)めたところへ御飯を移さなければなりません。お櫃のまだ暖かいところへ御飯を移すとそれが爲(ため)に悪くなります。

記者『御飯は一度腐り出すと毎日癖がついて腐るようですがあれはどう云ふものでせう。

夫人『それは一度でも御飯の腐ったお櫃を水でザッと洗ってその儘(まま)使ふからです。さう云ふお櫃はグラグラ沸(に)立った湯を澤山(たくさん)注(つ)いでよく洗ってよく乾かしてから再び使ふやうにしなければいけません。つまり熱湯消毒(ねったうせうどく)をして腐敗菌を殺して了(しま)ふのです。それにこのお櫃は一旦日光(にっくわう)に干せば自然と日光消毒(にっくわうせうどく)になります。

記者「なかなかむづかしいものですね。その外にもまだご飯を腐らせない工風(くふう)がありませうか。

夫人『御飯を移す時お櫃の底へ梅干を一つ入れて置くのも御飯の腐り方を防ぎます。

記者『御飯の腐ったのは使ひ道がありませんか。

夫人『少し位(くらい)なら糠味噌(ぬかみそ)へ入れると糠味噌の味がよくなります。

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