2017年04月13日

「昔はなし」その269 本町のホラ万の話

本町のホラ万の話

 呉服町の角に三河屋という洋品店があり
ました。ほかに本町に萬屋という麻商店が
ありました。高須万吉と云いました。弟の
寿一に店をゆずって万吉は別居して気楽に
暮らしておりました。この万吉は風変りな
男で好きなことをして暮らしていました。
世間ではホラ万といっていました。ホラを
吹いてもそのホラが嘘でないことは感心
なものでした。私が義太夫をやっているこ
ろ「君にバチをやろう。うちには象牙のバ
チなど百も二百も長持にほうりこんであ
る」と大きなホラをふくのです。またホラ
だろうと思っていると、ちやんと、バチを
持ってきてくれるといったホラを吹くなか
にも律儀な一面がありました。また「君は
太鼓も打つと云うが太鼓のバチも沢山あっ
て困る、一、二組君にやる」と云つて持っ
て来てくれた事があります。
 ホラ万といわれた高須萬吉は喰物につい
てもうるさい男で、料理屋へ出かけると自
分が板場へはいっていって「俺にやらせ
ろ」とやりはじめました。
 カツブシの出汁から、何もかも自分の思
い通にやり、いろいろ料理をつくるのです
が、板場には必ず「ほい、これを」と祝儀
を出すので、板場の連中も小言は言えませ
んでした。
 さて、その料理ですが、これは、ハシに
もかからぬ、まことに妙な味で、喰えるこ
とは喰えるが苦痛を感じるような品々でし
た。

同じカテゴリー(豊橋の昔はなし)の記事画像
「昔はなし」その177 豊川鉄道の開通式
「昔はなし」その163 安藤の豚会社
「昔はなし」その151 三千円で失つた機関庫
「昔はなし」その143 仙十さんの太閤ぶり
「昔はなし」その135 悟真寺の池
「昔はなし」その112 浮世絵と川せり
同じカテゴリー(豊橋の昔はなし)の記事
 「昔はなし」その312 あとがき (2017-05-26 06:00)
 「昔はなし」その311 札木の八日講の御膳所 (2017-05-25 06:00)
 「昔はなし」その310 服部長七の鋭い頭 (2017-05-24 06:00)
 「昔はなし」その309 豊沢団平の三味線 (2017-05-23 06:00)
 「昔はなし」その308 浅吉、高利以上だと嘆く (2017-05-22 06:00)
 「昔はなし」その307 皇太子の料理人の苦労 (2017-05-21 06:00)
Posted by ひimagine at 06:00│Comments(0)豊橋の昔はなし
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。