2017年03月22日

「昔はなし」その247 藤堂検事長の謡曲講義

藤堂検事長の謡曲講義

 昔、愛知県知事に深野という男がいました。
謡は素人ばなれのした巧みなものでした。従
って、「知事これを行えば、吏員、これを習う」
というわけで、当時庁内の謡曲熱はさかんで
した。
 また、名古屋にいた藤堂検事長と云うのも謡
曲が好きでした。あるとき、私が新城の能会へ
稽古のため行っていると、巡査が呼びにきて
「急用だから家へ戻れ」というのです。巡査の
使いですから、あわてて家へ戻ってくると、藤
堂検事長が「待ちかねた」と言わんばかりの顔
付で、待っているのです。なるほど検事長では
巡査が使いにくるわけだと思いました。さて、そ
れからがまた大変で、検事長の謡曲講義が始
まり「わしは深野以上ぢゃ」と講じては謡い、謡
っては講じて、とうとうその晩は「泊っていく」と
いう訳で、やれやれ、これで無罪放免かと思う
と、左にあらず、翌朝、検事長は目を覚ますな
り、私を呼んでまた講じ、謡い、「どうぢゃ、深野
以上だろう」という判決のくりかえしには、私も
弱ったことがありました。

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Posted by ひimagine at 07:35│Comments(0)豊橋の昔はなし
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