2017年01月27日

「昔はなし」その193 岩田屋の先々代

岩田屋の先々代

 本町の茶道の大家、兼子魚典のところへ、私
は出かけて、料理の話をしてもらい大いに教え
られるところがありました。千鳥、さが、おしど
り、うずら、へちま、れいし、ふきのとう、だいこ
ん等の種類についての料理方など教わりまし
た。
 その兼子の家のすぐ前に岩田屋という金物
店がありましたが、この先々代は茶の心得の
ふかい人で、あるとき、私に「お前は兼子のと
ころへなにしにいくんだ」と聞くのです。私が
「お茶料理を習いにいきます」と申しました。
すると先々代は「面白くないなあ」というので
す。「そりやどういうわけですか」とたずねかえ
すと「調和と、その趣きということを私は料理で
いちばん注意している。私ならおひら=碗盛り
=などは例えば笹の葉と青くもでいくね」という
説明なんです。
 私は驚いて「それじゃ喰べるわけにいかんじ
やないですか」と反問すると、先々代は「料理
は喰うのは二のきりで、見ての調和が第一だ」
と、笑って答えました。そして「だいたい兼子の
料理などは、まだまだ喰べられるから駄目だ」
というのです。これには私も驚きましたが、乱暴
なような話のなかに、なにか料理の真理がふく
まれている感じがしました。

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Posted by ひimagine at 06:00│Comments(0)豊橋の昔はなし
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