2016年12月25日

「昔はなし」その165 安藤とへらへら坊

安藤とへらへら坊

 安藤政次郎が豊橋へきてだいぶ日が経って
からのことです。はなし家の三遊亭円遊が豊
橋へきて私の家へ泊めてやったとき安藤が円
遊に面会を申込んできました。
 円遊に会うなり、安藤はふところから大切そう
にふくさに包んだものをとりだしました。そして
「円遊さん、これはヘラヘラ坊万橘の位はいで
す」というのです。ヘラヘラ坊と聞くと円遊の顔
色がさっと変りました。つまり円遊はヘラヘラ坊
には、なみなみならぬ恩顧があったからです。
 安藤はつづけて「私は、この位はいを長い
間、供養してきたが、ほんとうを云へば、私が
供養するよりも、あなたが供養すべきもので
す。仏もその方をどのくらい喜ばれるか知れま
せんぞ」と云うと円遊も今さらながら恐縮して
「はい、では、その位はいは私がいただいて
参ります」と、東京へ持ち帰りました。安藤は
義理だけのために何処にも身よりのなかった
ヘラヘラ坊を供養していたわけですが、私も
そのとき感心な男だと思いました。


ウィキペディアよりヘラヘラ坊万橘

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Posted by ひimagine at 06:00│Comments(0)豊橋の昔はなし
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