2016年12月12日
「昔はなし」その152 魚典と晩節と稲垣
魚典と晩節と稲垣
本町にいた兼子魚典という茶の大家の話は
しばしば語りましたが、田町瀬古に晩節という
茶人、稲垣という茶人が八町にいました。稲垣
のところへ魚典と晩節が来たので一献というこ
とになりましたが、魚典も晩節も二人でどんど
ん飲むだけで、その家の主人公の稲垣にはい
っこう盃をささないのです。
稲垣はもどかしくなって水屋の方にはいっ
て、準備してあった濃茶茶碗でガブガブやっ
ているうちに、その場ヘゴロリと寝てしまって
大いびきです。一方、魚典と晩節の方は二人
で大いにやって、二人ともその場で大いびきと
なり主客ともども別々に寝てしまいました。
稲垣が目をさまして茶席へ行くと、二人とも大
いびきでしたのでゆり起すと「それはゝ」とばか
り今日はこれでと「茶も飲まず帰る」と云いま
す。魚典は近くですからいいのですが、晩節は
田町なので魚典の家の荷車にのせて帰しました。
魚典は得意の「お前を――待ちまち―」と唄
い晩節を荷車に乗せ「かやの―そ―と」と唄い
主人稲垣の送りをうけ失礼するというまことに
茶人らしい遊びでした。
兼子魚典はなにごとにも無雑作な人でした
「まあお茶でも一服」などといわれても「またい
ずれ!」と申して用件をすますと、さっさと出か
けてゆく風でした。
本町にいた兼子魚典という茶の大家の話は
しばしば語りましたが、田町瀬古に晩節という
茶人、稲垣という茶人が八町にいました。稲垣
のところへ魚典と晩節が来たので一献というこ
とになりましたが、魚典も晩節も二人でどんど
ん飲むだけで、その家の主人公の稲垣にはい
っこう盃をささないのです。
稲垣はもどかしくなって水屋の方にはいっ
て、準備してあった濃茶茶碗でガブガブやっ
ているうちに、その場ヘゴロリと寝てしまって
大いびきです。一方、魚典と晩節の方は二人
で大いにやって、二人ともその場で大いびきと
なり主客ともども別々に寝てしまいました。
稲垣が目をさまして茶席へ行くと、二人とも大
いびきでしたのでゆり起すと「それはゝ」とばか
り今日はこれでと「茶も飲まず帰る」と云いま
す。魚典は近くですからいいのですが、晩節は
田町なので魚典の家の荷車にのせて帰しました。
魚典は得意の「お前を――待ちまち―」と唄
い晩節を荷車に乗せ「かやの―そ―と」と唄い
主人稲垣の送りをうけ失礼するというまことに
茶人らしい遊びでした。
兼子魚典はなにごとにも無雑作な人でした
「まあお茶でも一服」などといわれても「またい
ずれ!」と申して用件をすますと、さっさと出か
けてゆく風でした。
Posted by ひimagine at 06:00│Comments(0)
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