2016年11月30日

「昔はなし」その140 首相夫人となつたお花

首相夫人となつたお花

 秋琴楼とか香雪軒へ愛知県の県令であった
勝間田稔がよく現れていました。香雪軒は、い
まの名古屋の商工会議所のあたりで、この香
雪軒へ同様にしばしば足を運んでいたのは、
当時の名古屋師団長の桂太郎でありました。
 勝間田は礼儀正しい学者肌の人で、桂太郎
はまた民間でも好評さくさくたる人でした。
 この香雪軒にお花という娘がありました。美
人というほどではないが、しとやかで男好きの
する娘でした。勝間田も、桂と同じように、この
お花にいわゆる中年の恋をしていたわけで
す。そして桂が東京転任となったとき、お花は
桂につれられ、ひそかに東京へ上ってしまい
ました。さぞ勝間田県令の胸中はやるせないも
のがあったと想像します。
 お花は、のちのち桂太郎の令夫人となり、さ
らに日本国総理大臣桂太郎の令室となったわ
けですが、名古屋の芸者たちが訪ねていって
も、少しもえらぶらず、よく親切にもてなしてい
たようです。
 勝間田はお花を桂にうばわれた悶々の気持
を長者町のぜにやのすずによって慰めていま
したが、一名「ぜにすず」と言われた彼女は名
古屋の名妓中の美人でありました。


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Posted by ひimagine at 06:00│Comments(0)豊橋の昔はなし
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