2016年11月14日
「昔はなし」その124 逃げだした梅ぼし庄次郎
逃げだした梅ぼし庄次郎
消防が各町にできたとき、小さな町は隣りの
大きな町へ組入れてもらいました。
清水なども、そういうわけで魚町へ組入れて
もらいました。神明町に磯部庄次郎という酒の
みがいて、この男は梅干一つあれば一升でも
二升でも飲むという男でした。この梅ぼしの庄
次郎が魚町組の消防として、あるとき岩屋山へ
遊山にいきました。
庄次郎はその日も、ぐでん、ぐでんに酔っば
らって、女や子供にからかいはじめました。「よ
せ」よと組の連中が制止しても聞かないで、一
人の上品な夫人にこんどはからかいはじめま
した。その夫人は当時の十八連隊長夫人でし
たが、誰もそんなことは知りませんでした。
磯部庄次郎が組の連中にひっばられていっ
てから連隊長夫人が「あれはどういう男か」と
尋ねると「魚町組のこういう男だ」と近くにいた
人々が教えました。そこで夫人は家へ戻って主
人に話すと連隊長は「そうか、よくないことだ
ね」と言ったきりだったんです。
ところが、この話が人づてに伝って「こりゃア、
早く連隊長のところへ、お詫びにいった方がよ
かろう」ということになって、魚町の頭取の古市
兼吉が本人を連れて官舎へ出かけました。
連隊長は「そんなことで来る必要はないの
に」といいながらも玄関で二人に会いました。
そのとき、どういうはずみか、玄関におかれて
あった連隊長の軍刀が、なにかの拍子で倒れ
たので、連隊長は、挨拶をうけながら倒れた軍
刀を立て直そうと、それに手をかけました。
すると、その途端庄次郎の顔色は真青になっ
て、一言も言わず、一目散に逃げだしてしまい
ました。磯部庄次郎は、てっきり、自分が斬ら
れると思ったのです。
さあ、この話がパットひろがりました。酒をの
んで大きなことをいう磯部も、これじゃア、まる
で「ヒーロに塩」「いやくもの子だね」と磯部株
がすっかり下落してしまいました。その後、磯
部庄次郎も、すっかり、しょげて、外出もしない
で小さくなっていました。その時の連隊長は渡
辺章という人でした。鬼連隊長といわれた佐藤
正連隊長の後任の人で立派な人でした。
消防が各町にできたとき、小さな町は隣りの
大きな町へ組入れてもらいました。
清水なども、そういうわけで魚町へ組入れて
もらいました。神明町に磯部庄次郎という酒の
みがいて、この男は梅干一つあれば一升でも
二升でも飲むという男でした。この梅ぼしの庄
次郎が魚町組の消防として、あるとき岩屋山へ
遊山にいきました。
庄次郎はその日も、ぐでん、ぐでんに酔っば
らって、女や子供にからかいはじめました。「よ
せ」よと組の連中が制止しても聞かないで、一
人の上品な夫人にこんどはからかいはじめま
した。その夫人は当時の十八連隊長夫人でし
たが、誰もそんなことは知りませんでした。
磯部庄次郎が組の連中にひっばられていっ
てから連隊長夫人が「あれはどういう男か」と
尋ねると「魚町組のこういう男だ」と近くにいた
人々が教えました。そこで夫人は家へ戻って主
人に話すと連隊長は「そうか、よくないことだ
ね」と言ったきりだったんです。
ところが、この話が人づてに伝って「こりゃア、
早く連隊長のところへ、お詫びにいった方がよ
かろう」ということになって、魚町の頭取の古市
兼吉が本人を連れて官舎へ出かけました。
連隊長は「そんなことで来る必要はないの
に」といいながらも玄関で二人に会いました。
そのとき、どういうはずみか、玄関におかれて
あった連隊長の軍刀が、なにかの拍子で倒れ
たので、連隊長は、挨拶をうけながら倒れた軍
刀を立て直そうと、それに手をかけました。
すると、その途端庄次郎の顔色は真青になっ
て、一言も言わず、一目散に逃げだしてしまい
ました。磯部庄次郎は、てっきり、自分が斬ら
れると思ったのです。
さあ、この話がパットひろがりました。酒をの
んで大きなことをいう磯部も、これじゃア、まる
で「ヒーロに塩」「いやくもの子だね」と磯部株
がすっかり下落してしまいました。その後、磯
部庄次郎も、すっかり、しょげて、外出もしない
で小さくなっていました。その時の連隊長は渡
辺章という人でした。鬼連隊長といわれた佐藤
正連隊長の後任の人で立派な人でした。
Posted by ひimagine at 06:00│Comments(0)
│豊橋の昔はなし