2016年11月06日

「昔はなし」その116 十八連隊内の犯人

十八連隊内の犯人

 十八連隊ができた頃です。第三大隊の大隊
長は田辺良成という人でした。その田辺大隊
の金庫が失くなったというので大騒ぎとなりま
した。陸軍の方では、隊内だけでは捜査の手
がとどかないので、当時の警察署長の肥田野
五郎に犯人捜査を依頼しました。
 肥田野も「これは容易ならんことだ」と、早速、
前に豊橋で署長をしていた下正恒が名古屋に
いたので協力を依頼しました。警察側は「これ
は外部からではない。隊内事情にくわしいもの
の手口だ」と断定して、除隊兵まで全部調査す
ることになりました。警察の六感はぴつたりと
当って、名古屋方面から入隊していたものが
除隊のどさくさに盗んだことがわかり、三日で
犯人は逮捕となりました。
 第三大隊の金庫といつても、それは軍用カバ
ン程のものでした。名古屋から逮捕通知があ
つたので大隊長田辺良成は、この大隊金庫を
迎えるために、私の家へ来て金庫の到着を待
っていました。私の家の前には剣突鉄砲の兵
士が六人も立っているのです。
 また駅へは、やはり剣突鉄砲の兵士が六人
も出かけていつて、駅から私の家まで大隊金
庫を護送してきました。それを受領した田辺大
隊長は十二人の剣突鉄砲の兵士に護られて
大隊金庫を隊まで持つていきました。 
 ものものしい行列で町のなかをぬっていくの
で、沿道では何事が起ったのかとびつくりしま
した。幸い中の金はそのままだったし、大隊長
もほっとして嬉しそうでした。

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Posted by ひimagine at 06:00│Comments(0)豊橋の昔はなし
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