2016年11月04日

「昔はなし」その114 稲垣探偵と水野住職

稲垣探偵と水野住職

 花園町の浄円寺の前住職の水野耕雨は、ら
いらくで風流でした。絵画に達者で、有名作品
などを、見分けがつかないほどに、模写が達者
でした。耕雨自身も面白い絵を描きました。世
を達観しているだけに口にするシヤレも堂に入
っていました。
 そのころ、刑事……そのころの探偵というよう
なことをしていた稲垣見国という人がありまし
た。探偵ですから、顔も広く、あちこちへ出入り
していました。したがって水野住職のところへも
稲垣はよく遊びに行っていたが、老齢になると
稲垣は警察を退いて薬屋を開業しました。
 そのころ、水野住職が用事があって町役場へ
行くと吏員が「水野さん、なにか面白い話はな
いか」というので住職は速座に「不思議な事が
あるもので犬(犬探偵)がマチン(犬を殺す毒
薬)を売るようになった」と真面目な顔で申しま
した。吏員は何のことかわからないので水野
住職に説明を求めてはじめて意味がわかって
大笑しました。
 それを聞いた稲垣がぷりぷりして浄円寺の水
野耕雨和尚のところへ出かけ「なにも、役場ま
で出かけて犬がマチンを売るようになったと言
わなくてもよい」というと水野は「あんまり恐っ
たら、お前さんの遊び場所が一軒滅るだけの
ことだ、とくのたつことじゃない」と涼しい顔を
しているので稲垣もおこるわけにいかずその
まま帰りましたが「犬がマチンを売る」という言
葉は当時は評判でした。

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Posted by ひimagine at 06:00│Comments(0)豊橋の昔はなし
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