2016年10月12日

「昔はなし」その91 飯のよそい方の見事さ

飯のよそい方の見事さ

 昔は、きり寿司というのがありました。魚町の
能舞台のあった表通りに一軒と舟町の大橋に
向っていく方の角に一軒ありました。むきみ、
はぜの煮たのや、なまふなどののったのを、
上から押して、これを適当に切って皿に盛る
んですが、きり寿司というものは、じっさいは
手で握ったのより、うまいものです。押しのかげ
んで、ふわっとしていて、ロヘ入れたときの調
子がまことによろしい。
 また下町に飯屋が一軒ありました。成瀬と申
しましたが、ここの飯がうまいだけでなく、ここ
の娘さんが、二十位茶わんをならべておいて
温い飯をしやもじを一ぺん使うだけで、つぎつ
ぎに飯を盛っていく鮮やかな手際だけは、あき
れるほど美事なものでした。あヽいう芸当は、
いまどきでも、昔でもなかなかないもので、私
はよく見とれたものです。


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Posted by ひimagine at 06:00│Comments(0)豊橋の昔はなし
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