2016年10月08日
「昔はなし」その87 他人の家で葬式
他人の家で葬式
遠藤安太郎と親交を加えていった現兼にま
だ逸話があります。
遠藤が自宅へ二階家を増築だか新築したこ
とがありました。八畳、六畳の小さな家でした
が一日に二百人づつを一週間にわたって、新
築被露の名で招きました。政治的な意味があ
ったので各町内の有力者はほとんど招かれて
いました。そのとき、新築被露の事務長みたい
な役割は現兼でした。もとより、広い場所では
ないので、テーブルを借りてきて、ならべても腰
掛が間に合わない。それで立食になりました。
それでも、狭い場所に二百人は立てないので、
盃に一ぱいか二はい酒をのむと、すぐ次の客
と交替というわけです。その忙しい入替をどん
どん進行させたのが現兼でした。
招かれた方も手ぶらでは―― というわけで
最低一円位は持っていったのですが、当時の
折詰は五十銭見当ですから、遠藤さんは儲け
たなあという評判でした。
また現兼の勢力があった話の一つに清水の
ある家で不幸がありました。近所の人が集って
葬式の相談をしたのですが、とても貧しい家で
客を入れる場所もないので現兼に相談すると
「それなら竹内市蔵のところでやれ」という一
言です。
近所の者が竹内のところへいって事情を話す
と「主人が上京中で、私一人では計らえませ
ん」と妻君が断ったが「あとは引受ける」の現
兼の指揮で、竹内の家をどんどん片づけて、
竹内の家で他人の葬式をやることになりました。
翌日、竹内が東京から帰つてみると、自分の
家から葬式が出ようとしているので、びっくりし
ました。顔色を変えている竹内に現兼が「お前
が留守だったから葬式にちょっと家を借りたで
のう」というと「そうでしたか」と竹内は返事し
て、あっさリケリがついてしまいました。現兼は
そういう男でした。
遠藤安太郎と親交を加えていった現兼にま
だ逸話があります。
遠藤が自宅へ二階家を増築だか新築したこ
とがありました。八畳、六畳の小さな家でした
が一日に二百人づつを一週間にわたって、新
築被露の名で招きました。政治的な意味があ
ったので各町内の有力者はほとんど招かれて
いました。そのとき、新築被露の事務長みたい
な役割は現兼でした。もとより、広い場所では
ないので、テーブルを借りてきて、ならべても腰
掛が間に合わない。それで立食になりました。
それでも、狭い場所に二百人は立てないので、
盃に一ぱいか二はい酒をのむと、すぐ次の客
と交替というわけです。その忙しい入替をどん
どん進行させたのが現兼でした。
招かれた方も手ぶらでは―― というわけで
最低一円位は持っていったのですが、当時の
折詰は五十銭見当ですから、遠藤さんは儲け
たなあという評判でした。
また現兼の勢力があった話の一つに清水の
ある家で不幸がありました。近所の人が集って
葬式の相談をしたのですが、とても貧しい家で
客を入れる場所もないので現兼に相談すると
「それなら竹内市蔵のところでやれ」という一
言です。
近所の者が竹内のところへいって事情を話す
と「主人が上京中で、私一人では計らえませ
ん」と妻君が断ったが「あとは引受ける」の現
兼の指揮で、竹内の家をどんどん片づけて、
竹内の家で他人の葬式をやることになりました。
翌日、竹内が東京から帰つてみると、自分の
家から葬式が出ようとしているので、びっくりし
ました。顔色を変えている竹内に現兼が「お前
が留守だったから葬式にちょっと家を借りたで
のう」というと「そうでしたか」と竹内は返事し
て、あっさリケリがついてしまいました。現兼は
そういう男でした。
Posted by ひimagine at 06:00│Comments(0)
│豊橋の昔はなし