2016年10月02日

「昔はなし」その81　人力車を見せた田新

人力車を見せた田新
　
　田中田新さんの先々代は田中新九郎といい
ました。人呼んで「田新」となってしまい、つい
に田新が名前になつたのです。
　この先々代の、そのまた親父が、豊橋へはじ
めて人力車をもってきました。東京から買って
きたその人力車は牡丹に岩が車のうしろに見
事に描かれていました。当時の人力車はどの
車も、そのうしろには、清正とか義経とかの絵
が極彩色で描かれていたものです。
　田新は、その入力車を買ってきて店先に据
えておいて一般の人に見物させました。田新
は文明開化の実物教育を犠牲をはらってやっ
ていたのだろうと思います。
　田新の先々代つまり田中新九郎は絹三とい
う呉服屋の神戸三九郎の家から田新へ養子に
きて、アメリカヘも行きました。
　絹三の息子もアメリカヘ行ったりして当時の
新しい人達でした。田新はパノラマというもの
をはじめて日本へ持ってきた人でした。神戸
は東京へ移ってパノラマの公開の準備をして
浅草でパノラマ大公開となりました。このパノラ
マは興行的には大して成功はしなかったと、聞
いています。活動写真はまだそのあとの話です。
　田新は豊橋の発展には大いに尽くした一人
です。人を招いたり、宮家をお泊めしても豊橋
で間に合うものは、どこをかけ廻っても豊橋の
もので間に合わせるといった愛郷心の強い人
でした。どうしても間に合わぬものだけは豊橋
以外の地からとりよせるのが田新の主義でした。
私利、私慾がなく、公共に尽くされた人物で三
浦碧水、原田万久、田中田新は豊橋の三傑だ
ったと思います。



「郷土豊橋を築いた先覚者たち」より田中田新

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Posted by ひimagine at 06:00│Comments(0) │豊橋の昔はなし
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