2016年09月13日

「昔はなし」その62 風呂のわからぬ殿様

風呂のわからぬ殿様

 さきの話に出た旧藩主毛利元昭が豊橋へ来
たとき、私の店へきまして奥座敷へ案内する
と、袴をつけて床の間の前に座ったなり、寝る
まで姿をくずさないのです。いくら殿様の修行
ができていると言ってもこれには驚きました。
 風呂の時間になって「さあ、お湯へ」とすすめ
ると、お付の女中が介添えして風呂場で、その
女中が背中を流すのです。「お湯を持ってこ
い」と言われるので、洗面器ぐらいの桶にお湯
を持っていっておきました。
 女中が「さあ、お流しがすみましたから、一度
中へ入られるとよろしゆうございます」と言うと
殿様は「どちらへ入るのか」と風呂へ入るのか
小さい桶の方へ入るのか迷っておられました。
 われわれには想像のできない話ですが、そう
いうことが昔の殿様にはさっばり判らなかった
と見えます。
 これを聞いて私は驚きました。もっとも豊橋へ
着かれた当初「さあ、どうぞ」といって御案内し
ないかぎり、同じ場所にじっといつまでも立って
いられるという風で殿様というような方は普通
とは、少しどころか大きな違いだと思いました。


ウィキペディアより
毛利元昭

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Posted by ひimagine at 06:00│Comments(0)豊橋の昔はなし
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