2016年08月20日

「昔はなし」その38 屋台店の歯医者

屋台店の歯医者

 今では専門の学校を出た立派な歯医者があ
って幸せですが、昔は、このままでいくと、いっ
たい歯の病気を治すには、将来どんなことにな
るかと案じられました。
 まず、大手通りに屋台店の……つまり露店
の歯医者が現れました。台をおいて突立って
いる歯医者の後には六尺もあるような朱ザヤ
の太刀が立てかけてありました。ここへ歯の
痛みやいろいろ歯の病気をもった人々が集っ
てくるのです。
 痛む歯を抜くときは、歯に糸をぐるぐると巻い
て片手に釘ぬきみたいなものを持って歯をこじ
り抜くのですが、このとき、背にして置いてある
六尺の長刀がものを言うわけで、その長刀を
気合で抜くのです。びっくりした拍子にゴリゴリ
と歯が抜けるという仕掛です。
 入れ歯は、その先生の自宅でやるんですが、
これが出来ると、どう見たって馬が口を開いた
みたいなもので、入れ歯をした相手の顔など
を見て話など出来るものじやないのです。気
の毒やら、おかしいやらです。どうも苦になる
入歯でした。もちろん、そんな歯でものは噛め
ませんでした。

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Posted by ひimagine at 06:00│Comments(0)豊橋の昔はなし
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