2018年08月11日

弦斎夫人の料理談 その4

パンの料理(れうり)は如何(いか)にするか

記者『第三日目(みっかめ)にはどう致(いた)しませうか

夫人『パンのソースかけが宜(よ)うございませう。それは手軽にするとパンを三分(さんぶ)くらいな厚さに切って一旦(いったん)焼いて小さく切ってスープ皿へ入れます。一合(がふ)の牛乳(ぎうにう)を煮立ててほんの少しの塩と砂糖を加(くは)えたら葛(くず)を大匙(おおさじ)半分程(ほど)水で溶いて牛乳に混ぜます。葛がかへったらそれをパンへかけて出します。葛のかはりに西洋(せいやう)のコンフラワを使(つか)へば尚(なほ)上等(じゃうとう)ですが、その方(ほう)はかへる時間が葛の三倍かかります。それからもっと美味しくするには葛がかへった時玉子の黄身を一つ入れて手早く掻き回してパンへかけます。

記者『今のは手軽な法(ほふ)ですが、手重(ておも)な法はどう致しますか。

夫人『このソースを上等にしますと、まづバターを大匙一杯ほどソース鍋で溶かしてよく煮立(にた)たせます。そこへコンフラワならば上等ですし或(あるひ)はメリケン粉でも宜うございますから大匙に半分入れてよく気長に叮寧(ていねい)にいためます。

記者『それはチトむづかしうございます。

夫人『ナニお慣(な)れになると何でもありませんがバターが生煮(なまに)えですと後でバター臭(くさ)くなりますし、いためやうが足りないと味が重くなります。杓子(しゃくし)でよくよくいためて一合の牛乳を注(さ)して塩と砂糖で味をつけます。それを前(まへ)の通(とほ)りに焼いたパンにかければ宜いのです。その外(ほか)にまだソースの種類は沢山ありますが、みんな少し面倒(めんだう)になります。

  

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2018年08月08日

弦斎夫人の料理談 その3

パンは如何(いか)に食(しょく)するか

記者『第一日(じつ)が大層(たいそう)長くなりましたが第二日目(にちめ)はパンと牛乳に致(いた)しませうか。私(わたくし)どもではパンを一斤(きん)買っておくと三日も四日もありますから新しい中(うち)はバターを付けて食べますが古くなると焼いてトーストにします。

夫人『それは丸で反対ですね。パンは新しいと鬆(す)の中に水氣(みずけ)を含んで居(ゐ)て胃液と抱合(はうがふ)しませんから新しい中(うち)は焼いてトーストにしなければなりません。古くなれば焼かないでも宜(よ)うございます。

記者『それは大(おほ)きに間違(まちがひ)でしたね。しかし、あんまり古くなったのは固くって困りますから焼いたほうが美味(おい)しい)様(やう)ですけれども、その焼き方にも何か方法(ほうほふ)がありますか。

夫人『胃の悪い人が召上がるにはパンを薄く切って遠火(とほび)で氣長(きなが)に焼かなければいけません。それをよく噛んで召上るのが一番宜(よ)いと申します。

記者『それへバターをつけても宜うございますか。

夫人『バターをつけるなら途中(とちう)で塗(ぬ)ってそれから火の上でバターを悉皆(すっかり)浸(し)み込む様(やう)に焼かなければいけません。バターを塗ってからは猶(なほ)遠火(とほび)にしないと融けてジュージューと火の上に落ちます。

記者『パンと牛乳(ぎうにう)と果物を用(もち)ゐるとして置いても果物の無い時には玉子を食べる事もありますが胃の悪い時は玉子も腹(はら)に持たれますね。

夫人『さういふ時には玉子の黄身ばかりをコップの中へ割って置いて少し砂糖(さたう)を交(ま)ぜて箸でよく掻き廻(まは)します。そこへグラグラ煮立って居(ゐ)る牛乳(ぎうにう)を注(つ)いでよく交(ま)ぜますとなかなか美味しうございます。
  

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2018年08月05日

弦斎夫人の料理談 その2

味噌汁は如何(いか)に立てるか

記者『先(ま)づ第一日(じつ)は何ですか。

夫人『第一日は尋常(じんじょう)普通の御飯(ごはん)にして味噌汁と香(かう)の物と梅干位を添(そ)へることに致しませう。それから生の果物を召上ることは御随意(ごずい)です。

記者『その味噌汁にも味の宜(よ)いのと悪いのがありますが美味しい味噌汁はどうしたら宜うございませう。

夫人『それは味噌の善悪(ぜんあく)に依(よ)りますけれども一つは味噌汁の立て方や煮方も肝心(かんじん)です。味噌汁は第一に立て方で味が違ひます。最初味噌ばかりをよく叮嚀(ていねい)に摺(す)ってそれが悉皆(すっかり)こなれたところで少しづつ水をさして行きませんと美味しくなりません。無性(ぶしゃう)なお三(さん)どんにまかせると少し摺って直ぐ水をさす方が楽ですから水を注してぐるぐると摺ります。あれでは味噌の味がよく出ません。それから今度は煮方が大切で火にかけて煮立ったところへ鰹節(かつをぶし)を入れたらサッと煮て上に浮いて来るアクを取って實(み)を入れます。實が煮えた時直ぐに出さないと美味しくありません。長く煮過ぎては味噌の味が抜けますし、一旦火から下(おろ)したものを又火にかけて温めて出す様(やう)では尚更(なおさら)味が悪くなります。

記者『私なぞは朝寝坊の方ですから二度も三度も温め直した味噌汁を食べるので美味しい譯(わけ)はありません。殊(こと)に味噌汁の薄いのと来ては湯を飲むようで實(じつ)に閉口(へいこう)です。

夫人『ですから料理の心得に味噌汁は濃いめに立てろ、吸物は淡(うす)めに立てろと申します。味噌汁の濃いのは湯を注(さ)しても直りますし、吸物の淡いのは塩を注しても直りますが、淡い味噌汁へ味噌を入れたら丸で味がありませんし、濃い吸物へ水(みづ)を注したら水っぽくなって食べられません。味噌汁の實に豆腐なんどを使ふ時には濃いめに立てておかないと豆腐から水が出て薄くなります。

記者『豆腐を實に入れた味噌汁はあんまり感心致しませんね。

夫人『どう致しまして、濱名(はまな)納豆(なっとう)を摺込んだ味噌汁なんどはお豆腐の實が一番よく合ふもので誰でもおかはりが欲しくなります。

記者『そんな味噌汁がありますか。

夫人『濱名納豆を少し摺(すり)鉢(ばち)でよく摺ってそこへ味噌を入れてよく摺り交ぜた味噌汁は實に結構なものです。

記者『濱名納豆は滅多に得(え)られませんが普通の味噌汁を美味しく立てる法がありますか。

夫人『三州味噌と普通のから味噌と半半に混ぜると美味しくなります。

記者『三州味噌とはどんなものです。

夫人『三河の國から来る味噌で、あの辺は豆が宜い爲、味噌がよく出来ます。三州味噌の中でも岡崎の八丁味噌が宜いのですし、八丁味噌の中でも太田製が一番上(じゃう)等(とう)です。

記者『三州味噌もなし田舎のから味噌ばかりで、から過ぎた時はどうします。

夫人『それには味噌汁が煮立った時ほんの少しの白砂糖をお入れなさい。

記者『折折(をりをり)味噌汁が酸(す)っぱくて困る事がありますね。

夫人『それは味噌が酸敗(さんぱい)したのですから煮立った時、重炭酸曹達(ソーダ)を少し入れるとシューと泡が立ちます。その泡を掬(すく)ひ取ると酸味(すみ)が忽(たちま)ち消えます。

記者『お魚を實に入れると味噌汁が美味しくなりますね。

夫人『お魚の味噌汁は普通のと違って、二時間以上も煮通さなければ宜い味が出ません。全體(ぜんたい)ならお魚の味噌汁は前の晩に極く薄く立てて二時間も煮通(にとほ)して翌日又煮て出した方が美味しくなります。鯉の濃漿(こくしゃう)なんどは晩に煮てその鍋を一晩地(ち)の上に置いて翌日又煮て出すと宜うございます。しかし斯(か)ういふ風に長く置くのは必ず鐵(てつ)鍋(なべ)を用(もち)ゐなければいけません。真鍮(しんちう)や銅(あかがね)の鍋を用いたら、それこそ中毒(ちうどく)を起こして大變(たいへん)です。それから魚もイナや鰡(ぼら)の類(るい)は一旦焼いて入れた方が宜うございます。

記者『今のお話に香(かふ)の物といふ事がありましたが澤庵(たくあん)などは不消化(ふせうくわ)だと云って食べない人がありますね。

夫人『御飯の時には香の物を召(めし)上(あが)らないと祕結(ひけつ)していけません。お米は祕結性のものですし澤庵は下剤ですから双方よく合ふのです。

記者『梅干も何かの効(かう)がありますか。

夫人『梅干は殺虫剤にもなるし鉛毒も消しますし湿気(しっき)も払ひますし大層胃の爲にお薬ださうです。
  

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2018年06月30日

弦斎夫人の料理談 その1

村井弦斎と云う人をご存知でしょうか?
文久3年に吉田藩に生まれ、明治から大正にかけて報知新聞などでジャーナリスト、小説家として活躍しました。
生地の豊橋ではその名を知る人はあまり居ませんが、結婚後晩年までを過ごした神奈川県平塚市には「村井弦斎公園」があり「村井弦斎まつり」が行われています。
今回ご紹介するのはその弦斎さんの著述ではなく奥様、多嘉子さんの陳述による、今でいえば料理エッセイ、生活の知恵のようなものです。
時代は明治40年代のことですが案外現代に通じる所もあり明治の日本女性の品格の素晴らしさを感じさせてくれます。

ボツボツとしか投稿できそうもありませんが年寄りのやる事ですので気長にお付き合いくだされば幸いです。


手軽実用弦齋夫人の料理談 第二編

石塚月亭編

朝飯(あさはん)は如何にすべきか(六月記)

記者『今日(けふ)は何か風(ふう)の変わったお料理談を伺(うかが)ひたいものですね。

夫人『風の変わったとはむづかしいご注文ですね。何に致(いた)しませう。

記者『私が平生(へいせい)知りたいと思って居(ゐ)るのは朝飯(あさはん)の料理法です。今の人は西洋風にパンと牛乳で朝飯を済(す)ませることもあり、オートミールを食べる人もあり、朝の食事もいろいろになって居(を)るようです。全体(ぜんたい)朝の食事には淡白なものを少し食べた方が宜(よ)いでせうか。それとも実(み)のあるものを沢山食べた方が宜いでせうか、その問題から先に伺いたいものです。

夫人『ォㇹㇹㇹㇹ大層(たいそう)むづかしくって私(わたくし)にはご返事ができません。しかし、その事は私どもでもいろいろに研究して居(お)りますので亜米利加(あめりか)では近来(きんらい)二食論(にじきろん)が盛んになりました。二食論とは朝飯(あさはん)廃止論で人間は朝飯(あさはん)を食べずに昼飯(ひるはん)と晩飯(ばんはん)を食べた方が衛生上に宜(よろ)しいという説です。ところが一方にはそれと反対に晩飯(ばんはん)廃止論があって朝飯と昼飯は沢山食べて宜いが晩飯は食べずにおくと夜中に胃が休息(きうそく)するので健康に宜いと云う説です。これは日本にも例があることで律宗(りつしう)の高僧達は正午過ぎには一切食物(しょくもつ)を口に入れないさうです。それで大層長命(ちょうめい)な人があります。胃腸病の大家(たいか)たる長與(ながよ)博士(はかせ)の御説(ごせつ)にも、朝と昼は胃の働きが活発(くわっぱつ)であるから食べ物が早く消化(せうくわ)するけれども晩は胃の働きが鈍くなるので昼飯(ひるはん)と晩飯(ばんはん)との間(あひだ)は時間も長くしなければならず、晩には消化(せうくわ)の宜(よ)いものを食べなければならぬと云う事です。

記者『さうしてみるといづれに随(したが)った方が宜(よ)いでせうか。

夫人『それは人人(ひとびと)の習慣(しふくわん)にもよりますから必ずこれに限るとは申(まを)されませんが果物のようなものは朝飯(あさはん)に食べる方が宜いと思ひます。西洋でも「朝の林檎は金なり、昼の林檎は銀なり晩の林檎は鉛なり」と申(まを)す位(くらい)です。晩食(ばんしょく)に消化の宜(よ)いものを食べておきますと朝はお腹が空いて居ますから何でも美味しく戴けます。

記者『ですが都会(とくわい)に住む者は日中(にっちゅう)事務を執(と)って昼は弁当飯(べんとうめし)で済ませる代わりに宅(たく)へ帰って晩食(ばんしょく)のご馳走を食べるのが何よりの楽しみですから、つひ晩食を多く食べ過ぎます。それが為(ため)に朝はどうも沢山食べられません。私(わたくし)どもは矢(や)っ張(ぱ)りパンと牛乳で朝の食事を済ませる方(ほう)ですけれども毎日パンと牛乳でも飽きますからいろいろに取りかへたいと思ひます。毎日変わった朝飯(あさはん)を食べるにはどうしたら宜(よ)うございませう。

夫人『それは幾通(いくとお)りも拵(こしら)え方がありますから一つづづ数えて見ませう。

  

Posted by ひimagine at 16:15Comments(0)弦斎夫人の料理談

2018年06月27日

試乗

日産リーフのモニターキャンペーンで電気自動車リーフを借りたので、今日は田原の蔵王山に登って来ました。
電気自動車と云っても特に違和感はなくドライブを楽しめました。蔵王山からの眺望も久し振りです。
風が強くてバルコニーに出らず建物の中からガラス越しの撮影なので一部影が写り込んだりしています。










  

Posted by ひimagine at 16:16Comments(0)番外

2018年06月25日

今朝の庭から

おはようございます。
気持ちのいい朝になりましたね。



去年、挿し木で増やしたクレマチス。時期遅れな今頃になって咲き始めてくれました。


これも紫のグラジオラス。


紫尽くしでムサキゴテンです。

  

Posted by ひimagine at 08:22Comments(0)小庭便り

2018年06月24日

夕焼け

ピンクの夕焼けでした。

  

Posted by ひimagine at 20:37Comments(0)夕方

2018年06月22日

梅田川の夕景色

暫らく振りの投稿です。






  

Posted by ひimagine at 20:07Comments(0)夕方

2018年06月07日

梅雨の中休み

梅雨の中休みになってくれそうですが、洗濯ものを外干しにしても大丈夫かな~?





  

Posted by ひimagine at 08:06Comments(0)

2018年06月03日

桔梗開花

我が家の桔梗第一号が開花しました。
音はしたのかな?




  

Posted by ひimagine at 07:56Comments(0)小庭便り