2018年08月08日

弦斎夫人の料理談 その3

パンは如何(いか)に食(しょく)するか

記者『第一日(じつ)が大層(たいそう)長くなりましたが第二日目(にちめ)はパンと牛乳に致(いた)しませうか。私(わたくし)どもではパンを一斤(きん)買っておくと三日も四日もありますから新しい中(うち)はバターを付けて食べますが古くなると焼いてトーストにします。

夫人『それは丸で反対ですね。パンは新しいと鬆(す)の中に水氣(みずけ)を含んで居(ゐ)て胃液と抱合(はうがふ)しませんから新しい中(うち)は焼いてトーストにしなければなりません。古くなれば焼かないでも宜(よ)うございます。

記者『それは大(おほ)きに間違(まちがひ)でしたね。しかし、あんまり古くなったのは固くって困りますから焼いたほうが美味(おい)しい)様(やう)ですけれども、その焼き方にも何か方法(ほうほふ)がありますか。

夫人『胃の悪い人が召上がるにはパンを薄く切って遠火(とほび)で氣長(きなが)に焼かなければいけません。それをよく噛んで召上るのが一番宜(よ)いと申します。

記者『それへバターをつけても宜うございますか。

夫人『バターをつけるなら途中(とちう)で塗(ぬ)ってそれから火の上でバターを悉皆(すっかり)浸(し)み込む様(やう)に焼かなければいけません。バターを塗ってからは猶(なほ)遠火(とほび)にしないと融けてジュージューと火の上に落ちます。

記者『パンと牛乳(ぎうにう)と果物を用(もち)ゐるとして置いても果物の無い時には玉子を食べる事もありますが胃の悪い時は玉子も腹(はら)に持たれますね。

夫人『さういふ時には玉子の黄身ばかりをコップの中へ割って置いて少し砂糖(さたう)を交(ま)ぜて箸でよく掻き廻(まは)します。そこへグラグラ煮立って居(ゐ)る牛乳(ぎうにう)を注(つ)いでよく交(ま)ぜますとなかなか美味しうございます。

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